\documentclass[a4j,12pt,openbib,oneside]{jreport} %{jsarticle} \usepackage{Dennou6} % 電脳スタイル ver 6 \usepackage{ascmac} \usepackage{tabularx} \usepackage{graphicx} % \usepackage[dvipdfm]{graphicx} % \usepackage[xdvi]{graphicx} \usepackage{amssymb} \usepackage{amsmath} %\usepackage{bm} % 数式記号をフォントを変えずに太文字にする %\usepackage{ulem} % 否定の横線や斜線を使う %\usepackage{subfigure} %\usepackage{doublespace} %\setlength{\baselineskip}{20pt} \pagestyle{DAmyheadings} % \Dtitle{地球赤道域の大気波動に関する研究} % 変更不可 \Dauthor{} % ゼミ担当者の名前 \Ddate{} % ゼミの日時 (毎回変更すること) \Dfile{} \setcounter{chapter}{0} % 章番号 \setcounter{section}{1} % 節番号 \setcounter{subsection}{0} \setcounter{equation}{0} % 式番号 \setcounter{page}{1} % 必ず開始ページは明記する \setcounter{figure}{0} % 図番号 \setcounter{table}{0} % 表番号 %\setcounter{footnote}{0} \def\thechapter{\arabic{chapter}} \def\thesection{\arabic{chapter}.\arabic{section}} \def\thesubsection{\arabic{chapter}.\arabic{section}.\arabic{subsection}} \def\theequation{\arabic{chapter}.\arabic{section}.\arabic{equation}} \def\thepage{\arabic{page}} %\def\thefigure{\arabic{chapter}.\arabic{section}.\arabic{figure}} \def\thefigure{\arabic{chapter}.\arabic{figure}} \def\thetable{\arabic{chapter}.\arabic{section}.\arabic{table}} \def\thefootnote{*\arabic{footnote}} %% 改段落時の空行設定 %\Dparskip % 改段落時に一行空行を入れる \Dnoparskip % 改段落時に一行空行を入れない %% 改段落時のインデント設定 \Dparindent % 改段落時にインデントする %\Dnoparindentpp % 改段落時にインデントしない \begin{document} %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% %%%%%%%%% Title %%%%%%%%% \title{% \vspace{-3.5cm} {\bf % {\huge % 修 \ \ \ 士 \ \ \ 学 \ \ \ 位 \ \ \ 論 \ \ \ 文 \\ \vspace{1.5cm}% 長期連続毎時衛星観測に基く\\ 海洋大陸域雲活動の広帯域スペクトル }% }% \\ \vspace{4.0cm} \begin{table*}[h] \begin{flushright} \begin{tabular}{ll} {\Large 専\hspace{0.5zw}攻\hspace{0.5zw}名} & {\Large 地球惑星 科学専攻} \\ {\Large 学籍番号} & {\Large 090S414S} \\ {\Large 氏\hspace{2.0zw}名} & {\Large 須賀 友也}\\ \end{tabular} \end{flushright} \end{table*} }% \date{\vspace{-9.0cm}\begin{flushright}2011年2月4日\end{flushright}} \author{神戸大学 大学院理学研究科 博士課程前期課程} \maketitle \mbox{} \thispagestyle{empty} % % %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% %%%%%%%%% Abstract %%%%%%%%% %%% 要旨 \begin{abstract}  静止気象衛星GMS-5, GOES-9, MTSAT-1Rの 長期観測毎時温度観測データを用いて広帯域周波数スペクトル解析, 東西波数スペクトル解析を行い, 海洋大陸及び赤道西太平洋における雲活動の変動に含まれる 周波数・波数成分のパワースペクトル密度%及び位相について の特徴を調べた. その結果, 各地点のスペクトルの形状は似ており, 周波数帯・波数帯によって一定の傾きが見られることが分かった. 周波数スペクトルについては各周期の振幅・位相の 地理的分布についても調べ, 1 年・半年・1 日・半日周期では海洋大陸上・沿岸域で卓越し, 3 ヶ月$\sim$ 7 日までの周期変動は海洋大陸の周辺海洋上で卓越し, 4 日$\sim$ 1.5 日は ITCZ 領域・SPCZ 領域で卓越することが 確認された. %%% これらの解析結果の妥当性について, まず活発な対流活動に注目するためデータに閾値を設ける場合との 解析結果の質の違いについて, 先行研究の結果から検討した. さらにデータを分割して同様の解析を行い, 季節内変動について データ期間により振幅が変動することを留意する必要があることを 示した. %%% また先行研究やその結果との比較から, 雲活動の変動は 降水量や東西風, 南北風など他の物理量の変動とも 関係があると考えられることを示している. %編集中 \end{abstract} %\chapter{} % 章の始めからの場合はこのコマンドを使用する %section{} % 節の始めからの場合はこのコマンドを使用する %\thispagestyle{empty} %%% 目次 \markright{%\arabic{chapter}%.\arabic{section} 目次} % \tableofcontents %\newpage %\listoffigures %\newpage %\listoftables %%%% %%%%%% 第1章 \chapter{序論} \markright{第 \arabic{chapter} 章 \ \ %.\arabic{section} 序論} % \section{研究の背景} 地球の対流圏では, 雲を伴う大気の対流活動が起こっている. 1年を通して日射の熱エネルギーを地表面・海面が受けとり, 地表面・海面からの赤外放射を吸収して大気が温められる. また海面や陸水面から水蒸気として供給される大気中の水の 凝結により, 潜熱が放出され大気が加熱される. それにより上昇流が起こり大気が上昇すると, 地表面付近で海や陸水から供給された水蒸気が凝結し, 雲が発生する. 凝結に伴い放出される潜熱が大気を加熱することで さらに上昇流が活発になり, それに伴い雲もより発達し, 全体として活発な対流活動が見られる. このような対流活動は, 対流圏下部の 赤外放射や水蒸気により蓄積された熱エネルギーを, 対流圏上部や他緯度に輸送する役割を果たしている. 赤道・低緯度領域では, 高温多湿な地表面・海面に接しており, 大量の水蒸気が大気に供給され, 潜熱の影響が大きくなっている. この影響により加熱が過多となり, その結果として 非常に活発な対流活動が起こっている. 特に東南アジアの多くの島が分布した海洋大陸と呼ばれる地域は, 特徴的な陸海の分布と暖かい海水が分布していることから それが顕著である. %大きな熱源の一つとなっており, 海洋大陸周辺の対流活動の活発・不活発は 地球の大気の運動に大きな影響を与えている. %赤道域の雲発生の周期性は特徴的であり, その周期性は他の物理量の %周期的変動と関係がある. 日射は地球の公転・自転による周期性と, 球面(緯度・太陽時)依存性を持っている. 日射加熱の周期性は陸・海の熱容量が大きく異なることで, 季節 (モンスーン) 変動, 日 (海陸風) 変動が生じる %加熱が起こり, また海・陸水の分布により供給される水蒸気量の違いもある. これらによって対流活動は時間的・空間的に影響を受けている. %%%% その結果, 対流活動は %を含む大気の変動は %様々な周期が重なり合った結果 積雲の発生・消滅のサイクル, それに伴う降水の 不定期な変動, 地理的な違いとして見られている. %%% そのような雲 (降水) の観測によって, 対流活動のメカニズムの解明を促進させることが 目的とされている. しかし, 個々に見ると小規模・短期的な雲を観測するためには 高分解能な観測手段が必要で, その雲が組織化された様々な規模の構造を観測するためには 高分解能な観測を長期・広域に渡り行うことが必須である. しかし最近までそのような観測データは無く, 全ての周期変動をまとめて研究することは難しかった. %%% %特徴的な周期変動はそれぞれに個別に取り上げられ研究されている. なので特徴的な周期変動に注目し, 長周期の変動については長期間・低分解能, 短周期の変動については短期間・高分解能な観測結果を 用いることで個別に研究されている. \subsubsection{経年変動} エルニーニョ南方振動 (El Nino-southern oscillation=ENSO) と呼ばれる, 太平洋とその上の大気との相互作用による数年間隔 (不等間隔なので周期変動ではない) の全球的気候変動が知られている. %%% Bjerknes Bjerknes (1969) は, 赤道太平洋上の降水量が経年変動していることと, 1963 年 $\sim$ 1966 年において海面水温の年偏差が正・負である領域が 年々逆転すること, またそれに伴いウォーカー循環の上昇・下降流領域が 東西に時間変動することを関係づけた. %%% Read また、Reed et al. (1961)らが発見した赤道下部成層圏の東西風の 準2年周期振動 (quasi-biennial oscillation=QBO) は, 対流圏から上方に伝わってきた大気波動 (赤道波) が東西風と 相互作用して引き起こされているとされているが, その原因で ある赤道波は対流圏内の積雲対流 (後述の季節内変動の一部) が引き起こしているものと考えられている. % %Reed et al. (1961) は赤道成層圏の東西風について %中央太平洋上の島での連続した 56 ヶ月の毎日観測データを用いて %偏東風と偏西風が約 2 年周期で交互に入れ替わることを調べた. %%% Hamada \subsubsection{季節変動} Murakami \& Matsumoto (1994) は, NOAA (National Oceanic and Atmospheric Administration : 米国海洋大気庁) 衛星の赤外観測データを用いて アジアと北西太平洋におけるモンスーンの発生・終息期の 地理的な分布を調べ, 東西アジアモンスーンは大陸と海洋の 南北熱的コントラストによって駆動される南北循環によって 引き起こされることを説明した. %%% Hamada et al Hamada et al. (2002) ではインドネシアの降水量の 季節内変動について,1961 $\sim$ 1990 年における インドネシアの各観測地点の降水量データのうち 欠損データが少ない年のデータを集め, 各年の雨季の開始・終了時期から 地理的な特徴の違いや経年変動, エルニーニョ・ラニーニャによる影響について示した. \subsubsection{季節内変動} Madden \& Julian (1971) は, 積雲集団が 赤道に沿った大規模な波動のある位相に補足されたように生じ, ほぼ地球一周くらいの長距離を東進する季節内変動 (Madden-Julian 振動)を発見した. %%%%% これについて, Hayashi \& Sumi (1986) は, 全球が南北対称・東西一様な海洋に覆われた「水惑星」 モデルによる数値実験を行って再現するのに成功した. Nakazawa (1988) は, GMS (Geostationary Meteorological Satellite) の赤外観測データを用いて この季節内変動を構成する超雲団 (super cloud cluster) の細かな構造を解析し, 数千 km の水平スケールを持つ超雲団 の中に数百 km の水平スケールの雲群 (cloud cluster) が埋め込まれる 階層構造を取ることを示した. \subsubsection{日周期変動} %%% Nitta Sekine Nitta \& Sekine (1994) では GMS の赤外観測データを用いて 海洋大陸周辺と太平洋上の領域の 対流の日周期成分について 季節ごと%に日周期成分 に振幅・位相と地理的な特徴を調べ, 日周期成分の振幅が陸上とその沿岸海上で大きいこと, また陸上では夜, 沿岸海上では昼間に対流が最大になることを示した. %%% Mori Mori et al. (2004) では海洋大陸沿岸域の降水の日周期について, スマトラ島と周辺海域の降水が夜には陸上, 朝には沿岸海洋上で 降水が集中していることを確認し, その降水域の位相 (伝播) の様子について, TRMM の観測データと その他の観測データを用いた研究結果と比較した. %%% Sakurai Sakurai et al. (2005) は, GMS の赤外観測データを用いて スマトラ島とその沿岸海上の雲群の日周期的な移動について調べ, スマトラ島の山脈で発達した雲群が基本的に西進する中で ITCZ (Intertropical Convergence Zone : 熱帯集束帯) が差し掛かった 領域では東進する雲群が存在することを示した. %その他にも ENSO(約 4 年周期), モンスーン(1 年周期), %MJO(数十日周期), 海陸風(1日周期)などがある. %さらに周期変動にはコリオリ力の向きがが赤道を境に逆転する %赤道大気固有の波動, すなわち赤道波と呼ばれる波動が %影響していることが分かっている. %赤道波とは, 赤道で振幅が最大となり赤道付近にトラップされる, 東西方向に伝播する波動である. %赤道波に関する理論的な研究論文にはMatsuno(1966)がある. %Matsuno(1966)は中高緯度帯の大気・海洋の運動に用いる線形浅水方程式を赤道域に適用した場合, %中高緯度帯で表れるような慣性重力波やロスビー波が赤道域にも表れるのか, という動機から研究を行った. %また中高緯度帯の慣性重力波はロスビー波に比べ振動数がはるかに大きいが, %慣性重力波の振動数はコリオリ力に比例するため低緯度になるとロスビー波の周期に近づいていく. %赤道域に 2 つの波が存在した場合, 両者の波を全く違う波として扱うことが出来るのかという疑問もあった. %これについては, 南北の振動モードが低い場合に, 西向きに伝播する両者の波を区別できなくなることが分かった. %研究の結果, 赤道域の慣性重力波とロスビー波に加え, 赤道固有の波動である混合ロスビー重力波と赤道ケルビン波の存在を明らかにした. %さらに赤道に沿って正弦的に熱源(冷源)を配置した場合の定常な大気の様子について議論している. % \section{本研究の目的} このように, 対流活動や大気の運動には 様々な時間スケールの変動が存在し, 海洋大陸周辺では様々な周期変動が研究されており, 個々の周期を取り上げた研究が多く行われている. その結果から, 周期変動の顕著さには地理的な条件が影響していること, 異なる周期変動の相互作用が影響していることが分かっている. しかし, 数年周期から日周期までの全ての周期を通して定量的に調べた例がない. 海洋大陸域では特徴的な海陸分布が領域の雲活動に影響を与えていることは 分かっているが, 陸・海を含めた広範囲の地域を通して見た場合の 各周期性・地理的特徴が生じる理由・メカニズムの考察については まだ不十分である. 中本 (2009) では ITCZ の変動の周期性をを調べるために, 静止気象衛星の赤外輝度観測による雲頂温度データを用いて 雲活動の変動に含まれる周波数スペクトルを取り出し, 年周期成分の振幅と位相の地理的分布を見ることで, 海洋大陸周辺における ITCZ の南北変動の特徴について調べた. ここで中本 (2009) で使用したデータセットは, 10 年以上の長期間の観測データの蓄積から 経年周期のような長周期成分を調べられるだけでなく, 毎時観測により日周期のような短周期成分も調べられる. すなわちこのデータセットから, 陸海含めた広範囲の観測領域における 経年周期から日周期までの周期成分を一通り調べることが可能であり, 上記の問題を解決する手段のひとつとなると考えた. そこで本研究では中本 (2009) で作成したデータに 最新のデータを追加してより長期間に拡張し, 同様の解析方法を用いて, 海洋大陸及び東インド洋・西太平洋の領域における 長期連続毎時衛星観測データによる 雲活動の広帯域スペクトル解析を行う. その結果について, 最初の試みとしてひとまず各周期ごとに注目し 振幅の大きさと位相についての地理的な特徴を調べることで 海洋大陸域の対流活動の周期変動の特徴を客観的に捉える. またその結果の妥当性と他の物理量との関係について考察する. % %%%%%% 第2節 \chapter{使用データ・解析方法} \markright{第 \arabic{chapter} 章 \ \ %.\arabic{section} 使用データ・解析方法} % \setcounter{section}{0} % 節番号 陸海含めた数千 km 以上の広範囲にわたる観測, または数年以上の長期間の観測のデータが必要な場合, 気象衛星による観測データがよく用いられる. 気象衛星には極軌道衛星と静止気象衛星があり, 見たい領域や必要なデータの時間分解能に合わせて 必要な気象衛星のデータを選択することができる. 本研究では数年周期から日周期までの 長・短周期の変動を合わせて見ることが目的であり, その為に10年以上にわたり毎時間観測を行なっている 日本の静止気象衛星の観測データを用いた. \section{使用データ} 本研究で用いたデータは, 中本 (2009) に従い 日本の気象観測に使用されている静止気象衛星(GMS-5,GOES-9,MTSAT-1R)の 赤外1(IR1)チャンネルデータを用いる. データは高知大学気象情報頁にアーカイブされている, 図 \ref{fig-IR1sample} のような 70N $\sim$ 70S, 70 E $\sim$ 150W の領域を緯度・経度座標に変換された 560$\times$560ピクセル (1ピクセル/0.25度) の画像データを用いる. そのうち, 20N$\sim$20S, 90E$\sim$150W の領域を抜き出して使用する. データ期間は, 中本 (2009) で使用された期間 (1996年$\sim$ 2006年) に 3 年分追加し, 1996年$\sim$ 2009年の 14 年間としている. %%% \begin{figure}[tb] \begin{center} \includegraphics[width=10cm]{./fig/IR1_09070112.eps} \end{center} \caption{\footnotesize{静止気象衛星による赤外 1 チャンネルデータの例. 上図は 2009 年 7 月 12 日 12 日の赤外 1 全球画像. (高知大学気象頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/)より) }} \label{fig-IR1sample} \end{figure} %%% データ期間中, 表 \ref{table-satdata} のように上記の衛星が 期間ごとに交代して観測を行なっている. そのため GMS-5・MTSAT-1R と GOES-9 の静止軌道位置の違い, 衛星間のセンサーの違いによるバイアスが含まれている. 中本 (2009) ではこのバイアスによるデータの質的な違いを 小さくするために補正を行っており, ここではそれに従ってデータの補正を行い, 3 つの衛星による観測データを 1 つの連続したデータとして 扱うことにする. %% \begin{table}[tb] \caption{\footnotesize{1996 $\sim$ 2009 年における各衛星のデータ期間.}} \begin{center} \begin{tabular}[tb]{|c|c|} \hline 衛星 & データの期間 (JST) \\ \hline GMS-5 & 1996 年 01 月 01 日 00 時 $\sim$ 2003 年 05 月 22 日 00 時 \\ GOES-9 & 2003 年 05 月 22 日 06 時 $\sim$ 2005 年 06 月 30 日 23 時 \\ MTSAT-1R & 2005 年 07 月 01 日 01 時 $\sim$ 2009 年 12 月 31 日 23 時 \\ \hline \end{tabular} \end{center} \label{table-satdata} \end{table} 衛星観測データの中でこの静止気象衛星のデータを扱う利点は, 領域の毎時の観測データが 10 年以上にわたり蓄積されていることである. Reed et al. (1961) や Hamada et al. (2002) が述べているように 経年変動のような長周期の変動を見るためには, その周期より長い期間, つまり数年以上のデータが必要となる. %2 $\sim$ 3 年くらいのデータ期間では十分でない. また日周期のような短周期の変動を見るためには 最低でも数時間のような時間分解能での観測データが必要である. この研究で用いるデータは両方の条件を満たしており, これにより数時間から数年まで幅広い周期を通して全体の変動を見ることが 可能である. もう一つの利点としては空間分解能が良いことで, 地理的な変動の境界やメソスケールから 地球規模のスケールの変動までの特徴について細かく見ることができる. \section{データセットの作成} 前節のデータを用いてデータセットを作成するが, 長期の観測データには必ずと言っていいほどデータの欠損がある. 中本 (2009) では長周期の変動に注目していたため, 半旬 (5 日) ずつ 72 期間にわけて欠損を除いたデータで平均を取ることで データセットを作成していた. しかし, 本研究では日周期などの短周期変動も見るので, 欠損があっても問題なく計算できる方法を取るか, 欠損を補完する必要がある. ここでは, 欠損を補完する方法でデータセットを作成する. 欠損データの数が多いか, また一部の期間に集中していないかで, 計算方法, 補完や平均の仕方, それに伴う誤差について考えなければならない. なのでデータセットの作成にあたり, まず期間中の欠損データについて確認する. %\subsection{欠損データについて} 表 \ref{fig-lackdata} は 1996 年$\sim$ 2009 年の, 1 ヶ月毎の 欠損データ数を示している. ここでの欠損データとは, ある時間の観測データが存在しない, または領域の全体にわたり異常な値を示しており使用できないと 判断したものを指す. %%% \begingroup \begin{table}[ht] \begin{center} \caption{\footnotesize{1996 $\sim$ 2009 年の各月ごとの欠損データ数. 合計は [年間または期間の欠損データ数]/[年間または期間のデータ数] を示している. 表中の白丸・黒丸は, それぞれ衛星が GMS-5 $\rightarrow$ GOES-9, GOES-9 $\rightarrow$ MTSAT-1R に交代した月を示す.}}% \scalebox{0.8}[0.8]{ \begin{tabular}[t]{|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|c|}% \hline %年 & 欠損データ数/全データ数 \\ 年 &Jan &Feb &Mar &Apl &May &Jun &Jul &Aug &Sep &Oct &Nov &Des & 合計 \\ \hline \hline 1996 &12 &35 &128 &34 &17 &19 &32 &38 &90 &75 &61 &24 &565/8784 \\ 1997 &5 &30 &82 &43 &48 &43 &55 &75 &152 &132 &79 &23 & 767/8760 \\ 1998 &46 &49 &159 &41 &10 &38 &11 &45 &120 &117 &15 &11 & 662/8760 \\ 1999 &24 &75 &109 &52 &298 &53 &129 &83 &138 &87 &65 &27 & 1140/8760 \\ 2000 &74 &55 &190 &124 &25 &54 &110 &90 &108 &59 &43 &74 & 1006/8784 \\ 2001 &20 &149 &273 &100 &39 &68 &35 &40 &132 &83 &74 &17 & 1030/8760 \\ 2002 &72 &30 &184 &38 &9 &8 &56 &104 &166 &131 &123 &10 & 931/8760 \\ 2003 &25 &31 &117 &83 &86$\circ$ &31 &26 &59 &111 &63 &7 &44 & 683/8760 \\ 2004 &7 &12 &106 &101 &9 &4 &7 &71 &157 &82 &88 &10 & 654/8784 \\ 2005 &23 &18 &107 &84 &4 &13 &7$\bullet$ &30 &89 &64 &4 &10 & 453/8760 \\ 2006 &1 &28 &66 &69 &2 &2 &4 &15 &3 &2 &3 &2 & 197/8760 \\ 2007 &1 &0 &3 &8 &0 &0 &1 &10 &3 &2 &0 &0 & 28/8760 \\ 2008 &1 &2 &3 &12 &0 &3 &1 &8 &1 &0 &1 &0 & 32/8784 \\ 2009 &1 &0 &1 &11 &0 &0 &1 &8 &2 &0 &4 &0 & 28/8760 \\ \hline 96-09 &312 &514 &1528 &800 &547 &336 &475 &676 &1272 &897 &567 &252 & 8176/122736 \\ \hline \end{tabular} } \end{center} \label{fig-lackdata} \end{table} \endgroup データの欠損数について見てみる. まず年間の合計欠損データ数を見ると, 1999 年に欠損数が増加し, 2003 年と 2005 年を境に 今度は減少していることが分かる. データ中の GMS-5 のデータ期間の前半である 1996 $\sim$ 1998 年は 欠損数は 565 $\sim$ 767 個だったのに対し, GMS-5 によるデータ期間の後半である 1999 年$\sim$ 2002 年は 931 $\sim$ 1140 個と大きく増加している. GOES-9 による観測期間に入る 2003 年$\sim$ 2005 年では 欠損数は 683 $\sim$ 453 個と 1996 $\sim$ 1998 年よりやや少なく, かつ単調減少している. MTSAT-1R の観測期間に入った 2006 年には 197 個, 2007 年$\sim$ 2009 年は 約 30 個と急激に欠損数が減少している. 割合に直すと, GMS-5, GOES-9 が観測しているデータ期間では だいたい 7$\sim$13\% の欠損データがあり, MTSAT-1R のデータ期間では 2006 年を除き 欠損データは 1\% 以下になっている. 月ごとの欠損データを見てみると, 3, 4, 8, 9月に欠損数が多くなっており, 1996$\sim$2005 年では 10\% 以上欠損している. この時期の欠損データの時刻を見てみると, 上記の月で 15 時とその前後 (13, 14, 16 時) の 2 $\sim$ 3 時間連続したデータが大量に欠損していることが分かった. このように, 欠損データが全く無い年はないが, 衛星が MTSAT-1R に交代してからは大分少なくなっている. それ以前のデータには欠損が多く, それら全ての欠損を補完したデータを 使用するには, その補完分による誤差が多く含まれてしまうだろう. なので変則的ではあるが, 長周期のスペクトルは, 14 年間のデータを欠損データを除いて半旬平均した データを使って解析する. 短周期のスペクトルは, 欠損データの年間の数, また連続した数が 少ない 2007 $\sim$ 2009 年のデータを補完して用いることにする. 毎時データによる解析を行う. 補完方法は, 1 $\sim$ 3 個の連続した欠損データの 前後の時間のデータを用いて線形補間を行っている. 全期間の欠損データの問題を解決した 14 年分の毎時データセットでの 解析は今後の課題とする. %それ以上連続して欠損した部分については, %同時刻データを毎時月平均したものを使って. %補完する予定 % GMS503052200VIS.pgm.gz -> GOE903052206IR1.pgm.gz % GOE905063023VIS.pgm.gz -> MT1R05063013IR1.pgm.gz % MTS209111200IR1.pgm.gz - MTS209112623VIS.pgm.gz % MTS209021704IR1.pgm.gz - MTS209021810IR1.pgm.gz % MT1R10070102VIS.pgm.gz -> MTS210070103IR1.pgm.gz % \section{スペクトル解析} %\section{解析方法の基礎の確認} 前の節で紹介したデータを用いて解析を行う. 解析方法は周波数スペクトル解析を行なう. 生のデータの変動に注目する場合, 前節で異なる衛星のデータ間で生じる 誤差の補正は行ったが, 衛星の直下観測点から離れるにつれて観測精度が悪くなる (データの質的な違いが生じる) %領域の観測点ごとの観測角度による赤外放射の大気吸収量の変化や %センサーが感知する地点ごとの放射面の変化などの要因から生じる誤差 についても考える必要があり, 領域の地点間での比較は難しくなる. しかし各地点毎に周波数スペクトル解析を行い, それによって得られる 振幅・位相を用いることで 地点間の質的な違いの問題を乗り越えて 地点ごとに比較できるという利点がある. スペクトル解析には FFT 法を用いている. FFT 法の利点はは計算が非常に高速な方法である. 一方欠点としてはプログラムの関係上 データの時間間隔が一定でないと計算できない. 他のスペクトル解析法を用いることでこの問題を回避するることはできるが, この研究で用いたデータは数が非常に多いため解析に非常に時間がかかる. また今後 2010 年以降の新しい観測データを追加しようとする場合, さらにデータの計算量が増えるだろう. なのでここでは欠損データを補完した上で FFT 法で解析を行うことにする. そこで FFT 法の基礎となる離散フーリエ変換の基礎事項について確認しておく. \subsection{離散フーリエ変換の基礎事項} 変数 $x(t)$ に対するフーリエ変換 $X(f)$ は %%% 日野 (1977) (新装版 2010) より %%% %\begin{align} % x(t) % = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} % \left(A_n\cos\frac{2n\pi t}{T} + B_n\sin\frac{2n\pi t}{T}\right) \\ % = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty} % \left(\sqrt{A_n^2 + B_n^2}\cos\left(\frac{2n\pi t}{T} - \theta_n\right)\right) %\end{align} \begin{align} X(f) &= \int_{0}^{\infty}x(t)e^{-i2\pi ft}dt \label{fourier-1} \end{align} である. 有限の $N$ 個の時系列データ $x_j (j=0,1,2, \ldots N-1)$ が与えられたとき, この有限離散化フーリエ変換を $X(k)$ とすると, \begin{align} X(k) &= \frac{1}{N}\sum_{j=0}^{N-1}x(j) \exp\left[-i2\pi \cdot \frac{k}{T} \cdot \frac{jT}{N}\right] \cdot \frac{T}{N} \notag \\ &= \frac{1}{N}\sum_{j=0}^{N-1}x(j) \exp\left[-i2\pi \cdot \frac{jk}{T}\right] \cdot \frac{T}{N} \label{fourier-2} \\ & (k = 0,1,2,\ldots, N/2) \notag \end{align} のように表される. ここで (\ref{fourier-1}) と (\ref{fourier-2}) の変数の関係は, \begin{align} \Delta t &= \frac{T}{N} \\ \Delta f &= \frac{1}{T} = \frac{1}{N\Delta t} \\ t = &j\Delta t = j\frac{T}{N} \\ f = &k\Delta f = \frac{k}{T} = \frac{k}{N\Delta t} \\ f_N = &\frac{N}{2T} = \frac{1}{2\Delta t} \end{align} となる. $f$ は周波数, $k$ は波数, $T$ はデータ全体の時間, $f_N$ は Nyquist は Nyquist 周波数である. またフーリエ解析では $f_N$ より小さい周波数までしか解像できない という性質から, 解析できる最短周期はデータの時間解像度の半分 までということが分かる. フーリエ係数 \begin{align} A_n&=\frac{2}{T}\int_{0}^{T}x(t)\cos\left(\frac{2\pi n}{T}t\right)dt \\ B_n&=\frac{2}{T}\int_{0}^{T}x(t)\sin\left(\frac{2\pi n}{T}t\right)dt \end{align} も同じく, $N$ 個の $x_j (j=0,1,2, \ldots N-1)$ において 有限余弦フーリエ変換および有限正弦フーリエ変換は 次のように表される. \begin{align} A_n&=\frac{2}{N}\sum_{j=0}^{N-1}x_j\cos\left(\frac{2\pi}{N}kj\right) (k=0,1, \ldots, N/2)\\ B_n&=\frac{2}{N}\sum_{j=0}^{N-1}x_j\sin\left(\frac{2\pi}{N}kj\right) (k=1,2, \ldots, N/2-1) \end{align} したがって $X(k)$ と $X(k)$ の 実部, 虚部 $X_r(k)$, $iX_i(k)$はそれぞれ \begin{align} X(f) &= \frac{T}{2N}[A_n - iB_k]\\ X_r(k) &= \frac{T}{2N}A_k \\ X_i(k) &= \frac{T}{2N}B_k \end{align} となり, $X(k)$ は $A_k$ と $B_k$ で表される. FFT のプログラムでは $\Delta t$ を省略した計算 \begin{align} A_k - iB_k = \frac{1}{N}\sum_{j=0}^{N-1}x(j) \left[\cos\left(2\pi j\frac{k}{N}\right) - i\sin\left(2\pi j\frac{k}{N}\right)\right] \end{align} が実行される. パワースペクトルの定義 \begin{align} P(f) &= \lim_{T\rightarrow \infty} \left[\frac{1}{T}X(f)X^*(f)\right] \end{align} から, 有限データの場合は \begin{align} P(k) &= \frac{1}{T}[X(k)X^*(k)] \\ &= \frac{T}{N^2}[A_k^2 + B_k^2] \\ &= \frac{\Delta t}{N}[A_k^2 + B_k^2] \label{psd} \end{align} となる. %%%%%% 位相については \begin{align} X(k) = [A_k - iB_k] &= \sqrt{A_k^2 + B_k^2}\exp(-i\theta_k) \\ \theta_k &= \tan^{-1}\frac{B_k}{A_k} \end{align} であり, %逆変換した $x(j)$ は %\begin{align} % x(j) &= \sum_{k=0}^{N-1} X(f) e^{i(2\pi/N)jk} \\ % &= \sum_{k=0}^{N-1} \sqrt{A_k^2 + B_k^2}\exp(i((2\pi/N)jk-\theta_k)) %\end{align} %と書ける. 周期成分の位相も $A_k$ と $B_k$ を用いて求めることができる. \subsection{周波数スペクトル解析のデータとスペクトルの平滑化} 実際に計算する $x(t)$ の値としては, \begin{align} x(t) = T_{bb}(t) - \overline{T_{bb}} \end{align} ここで $T_{bb}(t)$ は毎時の雲頂温度, $\overline{T_{bb}}$ は14 年間の平均雲頂温度, 周期 $T/2n$ の波の振幅が $\sqrt{A_n^2 + B_n^2}$ %, 位相が $\theta_n = \tan^{-1}(b_n/a_n)$ である. FFT 法は直接法と呼ばれる種類のスペクトル解析法である. 直接法は, 生のデータをフーリエ変換し, その結果から生のスペクトルが得られる. FFT 法で得られる生のスペクトルは推定誤差が含まれており, そのため生のスペクトルの分布は激しい振動を示す. \begin{figure}[htb] \includegraphics[clip,width=14cm]{./fig/relate-mean_00n-110e.eps} \caption{\footnotesize{ FFT 法で得られた生のスペクトルと, 周波数平滑を行なったスペクトルの例. データは半旬平均した 1996 $\sim$ 2009 年の EQ-110E$^\circ$ から. 周波数平滑は, 前後合わせて 11 個のデータの移動平均で行なっている. }} \end{figure} この推定誤差を小さくするために平滑化を行う必要がある. 主に用いられる平滑化の方法としては, \begin{enumerate} \item 周波数領域での平滑化 (周波数平滑) \item 時間領域で分割して複数のスペクトルを求め, それを平均する (分割平均) \end{enumerate} がある. 両方用いられる場合もあるが, 平滑化を行うことで, 周波数分解能が低下してしまう. すなわち調べることができる周波数スペクトルの 最短周期が大きくなってしまう. また後者はデータ期間を分割することで見ることができる 周波数スペクトルの最長周期が短くなってしまう. %この研究では毎時観測データを使っていることで この研究で用いているデータは時間分解能が 1 時間なので, 短周期の場合は平滑化による分解能の低下に対しても 日周期のスペクトルを見る余裕がある. 逆に長周期の場合は, データの期間は 14 年分あるが, なるべく長い経年周期のスペクトルも見たいと考えている. なので, ここでは周波数平滑を用いて平滑化を行なった. 今後データがさらに蓄積されたときに両者を使い平滑化することで より正確にスペクトルの情報が得られるだろう. 周波数平滑は隣接する 11 個の $P(k)$ を移動平均し, \begin{align} \hat{P}(f) &= \sum_{N-5}^{N+5}P(f) (k = 5, 6, \ldots, N-6) \end{align} のように取る. \subsection{東西波数スペクトル解析} 水平方向にも高分解能な静止気象衛星データの性質を生かし, 東西波数スペクトルについても同様に解析を行う. データは半旬平均データを使用し, 各緯度の東西 90E$\sim$150W の範囲の連続したデータについて フーリエ変換を行い, 得られる波数スペクトルを見る. 東西波数スペクトルについては 衛星の直下観測点から離れるにつれて観測精度が悪くなる という問題があるが, この問題の解決は今後の課題とし, ここでは単純に静止衛星観測データを使用した解析の結果 として見る. %%% 第 3 章 \ \ \chapter{解析結果} \markright{第 \arabic{chapter} 章 \ \ %.\arabic{section} 解析結果} % 前章のデータと解析方法を用いて得られた 各緯度経度における広周波数帯のスペクトルの結果を示す. 得られたパワースペクトルは各周期成分の振幅を意味している. \section{周波数スペクトルの全体的な形状} \begin{figure}[tb] \includegraphics[clip,width=14cm]{./fig/plot_00n.eps} \includegraphics[clip,width=14cm]{./fig/plot_00n-nama.eps} \caption{\footnotesize{各緯度経度におけるスペクトルの例. 上図が 14 年間の半旬平均データのスペクトル. 下図が約 3 年間の毎時データのスペクトル. グラフの縦軸はパワースペクトル, 横軸は周期(y:year,m:month,d:day,h:hour). 赤, 緑, 青, 紫, 水色の実線はそれぞれ 赤道上の 5 点 (100E, 120E, 140E, 160E, 180E) のスペクトル を示す. 図中の直線は対数表示のスペクトルの傾きを示す線で, それぞれ周波数の $-3$ 乗, $-5/3$ 乗を示す.}} \label{spectrum} \end{figure} 得られたスペクトルの例を 図 \ref{spectrum} で示す. 図 \ref{spectrum} の上図は 14 年間の半旬平均データのスペクトル, 下図は毎時データのスペクトルについて赤道上の経度方向に 20 度毎に 離れた 5 点の結果を重ねている. 単位はそれぞれ K$^2\cdot$ pentad, K$^2\cdot$ hour であり, 図の縦軸のオーダーは同じに見えるが, 実際には (\ref{psd}) の係数 (時間分解能と解析するデータ数) から, 14 年間の半旬平均データと毎時データのスペクトルの比はは約 3000 倍である. 14 年間の半旬平均データのスペクトルではおよそ 2 年$\sim$ 1 ヶ月, 毎時データのスペクトルではおよそ 3 ヶ月 $\sim$ 半日 までの範囲の 周期成分について見る. 図 \ref{spectrum} の上図, 下図を見ると, わかり易いピークが上図では 1 年と半年, 下図では1 日周期にある. 1 年周期は 140E をのぞいた 4 点がピークを示しており, 半年周期は 100E が特に大きい. 1 日周期はスマトラ島上の 100E と ニューギニア島沿岸海上の 140E が 他の周期と比べて 10 倍以上大きくなっている. その他も 3 ヶ月 $\sim$ 3 日周期の範囲でピークと言える 振幅の大きい周期成分が存在し, 各地点でそのピークを取る周期が異なる. またスペクトルには周波数帯ごとに一定の傾きが見られる. 図中の線で示すように, 2 年$\sim$ 3 ヶ月周期では周波数の $-5/3$ 乗 3 ヶ月$\sim$ 3 日周期までは周波数の $-1$ 乗, 3 日$\sim$ 数時間周期ではまた周波数の $-5/3$ 乗に, それぞれ近い傾きとなっている. \section{周波数スペクトルの振幅と位相の地理的分布} 各緯度経度のスペクトルの結果から, 同周期の振幅・位相の値を抜き出し 周期ごとの振幅・位相の地理的分布を見る. 図 \ref{geo-freq-1}, \ref{geo-freq-2}, \ref{geo-freq-3} の 左が振幅, 右が位相の分布図である. ここではスペクトルのピークが見られた中から 2 年, 1 年, 半年, 3 ヶ月, 2ヶ月, 1.5 ヶ月 1 ヶ月, 20 日, 10 日, 7 日, 4 日, 2 日, 1.5 日, 1 日, 半日のスペクトルを選択した. %% \begin{figure}[tb] \noindent \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_2year.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_2year.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_1year.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_1year.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_6month.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_6month.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_3month.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_3month.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_2month.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_2month.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_1month.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_1month.eps} \\ \caption{\footnotesize {14 年間の半旬データによるスペクトルの 各周期成分毎の振幅・位相の分布図. 周期は上から 2 年, 1 年, 6ヶ月, 3ヶ月, 2ヶ月, 1ヶ月.}} \label{geo-freq-1} \end{figure} \begin{figure}[tb] %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0017.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0017.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0023.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0023.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0034.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0034.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0051.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0051.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0102.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0102.eps} \\ \caption{\footnotesize {毎時データによるスペクトルの 各周期毎の振幅・位相の分布図. 周期は上から 2ヶ月, 1.5ヶ月, 1ヶ月, 20 日, 10 日, }} \label{geo-freq-2} \end{figure} \begin{figure}[tb] %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0146.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0146.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0256.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0256.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0512.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0512.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_0682.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_0682.eps} \\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_1024.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_1024.eps} \\ %% % \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_1365.eps} % \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_1365.eps} \\ % %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/psd_2048.eps} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/phase_2048.eps} \caption{\footnotesize {毎時データによるスペクトルの 各周期毎の振幅・位相の分布図. 周期は上から 7 日, 4日, 2 日, 1.5 日, 1 日, 12時間(半日)}} \label{geo-freq-3} \end{figure} 各周期ごとの振幅と位相の地理的分布について特徴を見ていく. %%%% 振幅について \subsubsection{振幅の地理的分布} まず振幅の分布図を見る. 振幅の分布図では周期成分の振幅が大きい領域 (赤, 黄, 緑の領域)に注目し, 各周期成分ごとに振幅の大きい領域の分布の特徴を比較する. %%% \begin{table}[t] \begin{center} \caption{\footnotesize{振幅の地理的分布について, 各周期の振幅が大きい 領域を示す.}}% \begin{tabular}[t]{|c|p{28em}|} \hline 周期 & \hfil 振幅が強い領域 \\ \hline 2 年周期& 赤道インド洋, 赤道太平洋 \\ \hline 1 年周期& ベンガル湾$\sim$インドシナ半島, フィリピン東沿岸海上, ジャワ島・沿岸海洋上, 北オーストラリア大陸上・沿岸海上 \\ \hline 半年周期& 北オーストラリア沿岸, マレーシア, フィリピン東海上 \\ \hline 3 ヶ月周期& フィリピン沿岸, 南シナ海, ベンガル湾, スマトラ島沿岸, SPCZ 領域 \\ \hline 2 ヶ月周期& 赤道インド洋, ベンガル湾, 太平洋北西部, 南シナ海, 北オーストラリア沿岸海上, SPCZ 領域 \\ \hline 1.5 ヶ月周期& フィリピン沿岸海上, ベンガル湾, 赤道インド洋, 南シナ海, 北オーストラリア沿岸海上 \\ \hline 1 ヶ月周期& ベンガル湾, 赤道インド洋, 南シナ海, 太平洋北西部, SPCZ 領域 \\ \hline 20 日周期& 南シナ海, 太平洋北西部, 赤道インド洋, SPCZ 領域 \\ \hline 10 日周期& フィリピン東沿岸上, SPCZ 領域, 南シナ海, ITCZ 領域 \\ \hline 7 日周期& フィリピン沿岸海上, ITCZ 領域, SPCZ 領域 \\ \hline 4 日周期& ITCZ 領域, SPCZ 領域 \\ \hline 2 日周期& ITCZ 領域, SPCZ 領域 \\ \hline 1.5 日周期& ITCZ 領域, SPCZ 領域 \\ \hline 1 日周期& 海洋大陸上, 沿岸海上 \\ \hline 半日周期& 海洋大陸上, 沿岸海上 \\ \hline \end{tabular} \end{center} \label{freq-amp} \end{table} 表 \ref{freq-amp} に周期毎の振幅が大きい領域を示している. 振幅が大きい領域の分布が特徴的な周期が, 1 年, 1 日, 半日周期である. 振幅の大きい領域はほぼ海洋大陸の陸上またはその沿岸海洋上に集中しており, それ以外の場所はほぼ一様に小さい領域なっている. また 1 年, 1 日周期は他の周期より全体的に振幅が大きく, ピークの領域の値は飛び抜けている. 半年周期も主にマレーシアや北オーストラリア沿岸に 振幅が大きい領域集中しているが, 1 年や 1 日と 比べると全体的に振幅は大きくなく, また海洋上でも やや振幅が大きい領域が広がってきている. %%%% 2 年周期も特徴的な分布をしている. 振幅が大きい領域は インドネシア東南海上の EQ $\sim$ 10S の赤道インド洋と, 8N $\sim$ 8S の赤道西$\sim$中央太平洋上に特に大きい領域があり, それぞれインド洋ダイポールモードとエルニーニョ・ラニーニャの 影響が現れる領域である. また高緯度になると弱くなっている. %%%% 3 ヶ月$\sim$ 7 日周期では, 陸よりも海洋上に振幅の大きい領域に 分布しており, それぞれ領域を見ていくと, いくつかの地域に集中していることが分かる. 具体的に挙げると, ベンガル湾, 赤道インド洋, フィリピン沿岸$\sim$南シナ海, フィリピン東部海域(太平洋北西部), 南インドネシア, 北オーストラリア, SPCZ 領域, ITCZ 領域である. つまり, SPCZ 領域, ITCZ 領域をのぞき, 海洋大陸周辺海洋上に 振幅が強い領域が集中している. しかし海洋大陸の陸上ではどの周期でも弱い領域になっていることが分かる. また赤道中央太平洋の領域も弱くなっている. 4 日周期$\sim$ 1.5 日周期では, 振幅が大きい領域は ITCZ 領域, SPCZ 領域 に沿って分布しており, その中で特に振幅が大きい領域が点在している. %%% %2 年周期は, ITCZ 領域のインド洋, 太平洋領域に特に強い領域がある. %1 年周期は, ベンガル湾からインドシナ半島陸部に特に大きい領域があり, %フィリピン西沿岸海上, %ジャワ島と沿岸海洋上, 北オーストラリアと沿岸海洋上にも見られる. %半年周期は, 北オーストラリア沿岸, マレーシアに特に大きい領域があり, %フィリピン東沿岸海洋上に見られる. %%3 ヶ月周期は, フィリピン沿岸, 南シナ海, ベンガル湾, スマトラ島沿岸が %%大きくなっている. また太平洋上のITCZ領域, SPCZ 領域にも見られる. %3 ヶ月周期は, インドネシア南沿岸海洋上で特に大きくなっており, %南シナ海, ベンガル湾, SPCZ 領域にも見られる. %2 ヶ月周期は, 赤道インド洋, ベンガル湾, %太平洋北西部, 南シナ海, オーストラリア沿岸海上, SPCZ領域に %特に大きい領域が見られる. %1 ヶ月周期は, ベンガル湾, 赤道インド洋, 南シナ海, 太平洋北西部, %SPCZ 領域に特に大きい領域がある. %%%% %次に毎時データのスペクトル解析の結果から作成した分布図を見る. %20 日周期は, フィリピン東西沿岸海上で特に大きい領域があり, %赤道インド洋, SPCZ 領域にも見られる. %10 日周期はフィリピン東沿岸上, SPCZ 領域で特に大きい領域があり, %南シナ海, ITCZ 領域でも見られる. %7 日周期は ITCZ 領域, SPCZ 領域に大きい領域が広がっている. %2 日周期も ITCZ 領域, SPCZ 領域に大きい領域が広がっている. %1 日周期は, 海洋大陸の陸部, 沿岸部に大きい領域が見られる. %半日周期は, 海洋大陸陸部, 沿岸部に大きい領域が点在している. %%%% %%%%%% %% 位相について \subsubsection{位相の地理的分布} 次に位相の地理的分布に注目する. 位相は周期における対流の活発・不活発である時期を示す. 例として, $\theta=0$ (赤) では, 1 年周期は半旬データが 1 月から開始し 12 月で終了しているので 1 月に 最も活発になる領域を示し, 1 日周期では毎時データが 0 時から始まり 23 時に終了しているので 0 時に 最も対流が活発になる領域を示す. $\theta=\pi$ (青) では半周期ずれているので, 1 年周期は 7 月, 1 日周期は 12 時に最も対流が活発になる領域を示す. 赤の領域などでところどころ見られる青のラインは, 移動平均によるゴミだと思われる. %位相は主に振幅が大きい領域について注目する. 位相で特徴的な周期は 2 年, 1 年, 1 日である. 2 年周期は, インド洋と太平洋領域の振幅が大きい領域は同位相になっている. 1 年周期は, 振幅が大きい領域の北半球, 南半球で逆位相になっており, それぞれの半球の夏に対応している. 1 日周期は, 振幅が大きい海洋大陸と沿岸海上で同位相, 振幅の弱い陸から離れた海洋上で逆位相となっている. \section{分割したデータ期間による周期成分の変動} 周期成分のうち, 2 ヶ月, 1 ヶ月については 14 年分の半旬データと 約 3 年分の毎時データの両方を示している. それぞれ比べると, 振幅の大きな領域の分布が異なっていることが はっきり分かる. これはデータ期間によって季節内周期の振幅が大きい領域が移動している ことが考えられる. そこで 14 年間のデータから 8 年間のデータセットに分割し, 1 年ずつずらした 7 期間について それぞれについてスペクトル解析を行なった. 図 \ref{8year-1}, \ref{8year-2}, \ref{8year-3} は 比較的 3 ヶ月$\sim$ 1 ヶ月周期の振幅が強い領域が多い 10N と 10S の結果である. スペクトルの全体的な形状は, 図\ref{spectrum}と同様の周波数の $-5/3$ 乗と $-1$ 乗の直線から, どのデータ期間でも同じであることが分かる. ベンガル湾の 10N-100E, 赤道インド洋の 10S-100E, 北西太平洋の 10N-150E, 北オーストラリア沿岸の 10S-130E, SPCZ 領域の 10S-170W, 160W に注目すると, 6 ヶ月$\sim$ 1 ヶ月の範囲でデータ期間によって各周期の振幅が 大きく変動していることが分かる。 最大で約 10 倍も周期成分の値が変化し, ピークの周期成分も異なっていることが分かる. %%% \begin{figure}[p] \begin{tabular}{ccc} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1201-10n-090e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2401-00n-090e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3601-10s-090e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1211-10n-100e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2411-00n-100e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3611-10s-100e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1221-10n-110e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2421-00n-110e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3621-10s-110e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1231-10n-120e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2431-00n-120e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3631-10s-120e-8year.eps}\\ %% \end{tabular} \caption{\footnotesize{14年のデータから1年ずつずらした7期間の 8年分のデータをつくり, それぞれ周波数スペクトル解析を行い, 各地点で 結果を重ねたもの. 左から 10N, 10S, 上から 90E, 100E, 110E, 120E の地点の結果. 図中の直線は対数表示のスペクトルの傾きを示す線で, それぞれ周波数の $-5/3$ 乗, $-1$ 乗を示す. }} \label{8year-1} \end{figure} \begin{figure}[p] \begin{tabular}{ccc} \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1241-10n-130e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2441-00n-130e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3641-10s-130e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1251-10n-140e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2451-00n-140e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3651-10s-140e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1261-10n-150e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2461-00n-150e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3661-10s-150e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1271-10n-160e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2471-00n-160e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3671-10s-160e-8year.eps}\\ \end{tabular} \caption{\footnotesize{図\ref{8year-1} と同様で, 左から 10N, 10S, 上から 130E, 140E, 150E, 160E の地点の結果. }} \label{8year-2} \end{figure} \begin{figure}[p] \begin{tabular}{ccc} %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1281-10n-170e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2481-00n-170e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3681-10s-170e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1291-10n-180e-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2491-00n-180e-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3691-10s-180e-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1301-10n-170w-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2501-00n-170w-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3701-10s-170w-8year.eps}\\ %% \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1311-10n-160w-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2511-00n-160w-8year.eps} & \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3711-10s-160w-8year.eps}\\ %% % \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1320-10n-151w-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=4.8cm]{./fig/2520-00n-151w-8year.eps} & % \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/3720-10s-151w-8year.eps}\\ \end{tabular} \caption{\footnotesize{図\ref{8year-1} と同様で, 左から 10N, 10S, 上から 170E, 180E, 170W, 160W %, 151W の地点の結果. }} \label{8year-3} \end{figure} \section{東西波数スペクトルの全体的な形状} 今回使用した雲頂温度データを用いて東西波数スペクトルを取ってみた. 各年の 1 月・ 7 月の第 1 半旬について各緯度のスペクトルを重ねて比較している。 どの緯度もスペクトルの形状は似ており, 1 月 と 7 月で夏半球側の緯度のスペクトルが全体的に強くなっている. また図に傾きが異なる 2 つの直線を置いているが, 大体波長が 500km より大きい波長領域で $-3$ 乗の傾き, 500km より小さい波長領域で $-5/3$ 乗に近いスペクトルの傾きが見られる. 傾きが切り替わる波数は 500km より小さい波長領域で時期によって異なっている. \begin{figure}[htbp] \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9601a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9607a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9701a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9707a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9801a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9807a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9901a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat9907a.eps} \\ \caption{{\footnotesize 半旬平均データの各緯度ごとの東西波数スペクトル. グラフの縦軸はパワースペクトル, 横軸は波長(km)を示す. 左側が 1 月第 1 半旬, 右側が 7 月の第 1 半旬, 上から 1996 - 1999 年の図. 図中の直線は対数表示のスペクトルの傾きを示す線で, それぞれ東西波数の $-3$ 乗, $-5/3$ 乗である.}} \label{horizontal-1} \end{figure}\begin{figure}[htbp] \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0001a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0007a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0101a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0107a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0201a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0207a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0301a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0307a.eps} \\ \caption{{\footnotesize 図 \ref{horizotal-1} と同様で, %半旬平均データの各緯度ごとの東西波数スペクトル. 左側が 1 月第 1 半旬, 右側が 7 月の第 1 半旬, 上から 2000 - 2003 年の図.}} \label{horizontal-2} \end{figure}\begin{figure}[htbp] \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0401a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0407a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0501a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0507a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0601a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0607a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0701a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0707a.eps} \\ \caption{{\footnotesize 図 \ref{horizontal-1} と同様で, %半旬平均データの各緯度ごとの東西波数スペクトル. 左側が 1 月第 1 半旬, 右側が 7 月の第 1 半旬, 上から 2004 - 2007 年の図.}} \label{horizontal-3} \end{figure}\begin{figure}[htbp] \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0801a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0807a.eps} \\ \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0901a.eps} \includegraphics[width=7cm]{./fig/plot-lat0907a.eps} \\ \caption{{\footnotesize 図 \ref{horizontal-1} と同様で, %半旬平均データの各緯度ごとの東西波数スペクトル. 左側が 1 月第 1 半旬, 右側が 7 月の第 1 半旬, 上から 2008 - 2009 年の図.}} \label{horizontal-4} \end{figure} \clearpage %%%%%%%%% 4 章 %%%%%%%%%%% \chapter{考察} \markright{第 \arabic{chapter} 章 \ \ %.\arabic{section} 考察} \section{雲頂温度のデータの扱い方} この研究では基本的な補正以外何も手を加えずに 雲頂温度のデータを扱っている. この場合, 降水を伴う活発な積雲だけでなく, 降水を伴わない薄い高層雲やまだ発達中の雲, そして雲が全くない時間, すなわち 地表面・海面のデータも含んだものとなっている. 単純に考えると, このデータのスペクトルが意味することは, 対流の周期的な活動度だろうと考える. (振幅 : ある周期における不活発な期間の対流の強さと 活発な期間の対流の強さの差, 位相 : いつ不活発な期間, 活発な期間になるか) ただ本研究の研究の目的は, 地球のエネルギー・水循環に影響を与えるような 活発な対流活動の周期変動について調べることである. 同じような赤道付近の雲頂温度データを用いた研究の場合, 活発な対流活動についてのみの変動を調べる場合, よく取られる方法としては雲頂温度データにしきい値を設け, 温度データとの差を取り, 閾値以上の値については 全て 0 として扱うという方法である. 閾値とする値は様々だが大体 255 $\sim$ 230 K の範囲で取られ, それによって地表面・海面のデータや 弱い対流による雲などのデータによる影響を取り除いている. しかし閾値を設けた場合, 0 以外の値を持つデータが不連続となり, 通常のスペクトル解析には適当ではないと考えられる. %%% 川村・竹田 (1992) でも同様に GMS の観測データに閾値を設けた 周波数スペクトル解析を行なっているが, その際に地表面・海面による影響について考慮し, しきい値を設けた場合と設けない場合でのスペクトルの比較を 行なっている. そこで対流活動のある程度活発な地域では スペクトルの分布や大きさにさほど差がないことを確認している. 対流が活発, すなわち全体的にスペクトルが大きい地点であれば, しきい値を設けた場合と同様にスペクトルの分布やピークについて 述べることができると考える. \section{振幅の地理的分布と陸の影響} 前章で得られた地理的分布から, %%%% 大洋上では Nakazawa (1988) が同じ静止気象衛星雲頂温度(高度)解析で示し, Hayashi \& Sumi (1986) が水惑星数値実験で再現したように, 様々な季節内変動が見られる. これに対し陸上やその付近では, 年周期・日 (半日) 周期が卓越している. また年周期の卓越域や位相の地理的変化については Murakami \& Matsumoto (1994) や 中本の先行研究とも 一致している. 上記の地理的分布をさらに詳しく見て %%% 陸の影響について考える. 1 年周期はインドシナ半島西沿岸, ジャワ島, オーストラリア北沿岸 を中心に付近の陸域・沿岸海上に集中しており, 1 日, 半日周期についてはほとんど陸上(とその沿岸海上)に 振幅が大きい領域が分布している. %% 3章から %1 年周期については, 中本(2009) でも述べているが, %Murakami \& Matsumoto (1994) で %定義されたモンスーン領域とよく一致する. %% %%2 日, 1.5 日周期は周期が近いにもかかわらず, 1 日周期は Nitta \& Sekine (1994) でも述べているように 地表面からの加熱による海陸風の影響だろう. 2 日, 1.5 日周期のような近い周期の振幅の地理的分布と 比べると, 1 日周期の振幅が大きい領域は 一転して全く異なる分布を示している. 1 日, 半日周期成分については, Nitta \& Sekine (1994) が太平洋のITCZ, SPCZ 領域にも 存在することを示しているが, 陸上が非常に大きいため判断しにくい. このような分布は, 1 日, 半日, 1 年周期が他の周期に比べ陸域に 強く依存することを示唆している. %1 日, 半日周期は陸による影響で間違いないだろう. 3ヶ月・2ヶ月・1.5ヶ月・1ヶ月・20日・10日・7日周期は, 海洋大陸上の振幅の弱さは 日周期が卓越していることが季節内変動に影響を与えていることが挙げられる. また振幅が大きい領域は海洋大陸周辺海洋上に集中している. 海洋大陸は領域中の対流活動の周期変動について 幅広い周期にわたり影響を及ぼしているということが確認できる. \section{異なるデータ期間による周期成分の変動} %Nitta \& Sekine (1994) と Mori et al. (2004) の結果と比較する. 海洋大陸周辺領域の日周期については, Nitta \& Sekine (1994) では 1980$\sim$1989 年の 3 時間毎の GMS データ を使用して季節ごとに日周期成分と位相について解析し, 北半球の季節が夏である 7 月と南半球の季節が夏の 1 月の振幅と位相の 分布を示しているが (図 \ref{nitta-mori} 右上・右中), 振幅について, 二つ分布の強い領域を合わせた結果と一致する. また位相についても, 振幅が強い陸上と沿岸海洋上の位相は 18 時$\sim$ 3 時の範囲で現れているが, 日周期の位相の地理的分布における夜間を示す赤色の領域と一致する. 異なるデータ期間による解析結果がある程度一致していることから, 日周期成分の振幅が強い領域のデータ期間による変動は小さいと言える. 同様に, 中本 (2009) では Murakami \& Matsumoto (1994) の 1970$\sim$80 年代のデータ解析と比較して, 結果があまり変わらないことを指摘している. しかし図 \ref{8year-1}, \ref{8year-2}, \ref{8year-3} の結果から, データ期間によって季節内周期の振幅が6 ヶ月$\sim$ 1 ヶ月周期の範囲で変動しており, ピークの周期成分も異なっていることが分かった. %%% 3.2 節のように各データ期間のスペクトルについて 地理的分布を見れば, 季節内周期の振幅の振幅が大きい領域が 移動していることも見えるかもしれない. %%% このことから季節内周期の周期成分については データ期間により各地点の振幅の大きさが変動する可能性がある. この要因のひとつとしては, 異なるデータ期間 それぞれに含まれるエルニーニョ・ラニーニャなどの経年変動の イベントが異なることが影響しているのではないかと考える. よって季節内変動の周期成分・地理的分布に着目する場合には データ期間に留意して解析する, もしくは今回行わなかったが分割平均 を用いてアンサンブル的に解析を行う必要があると思われる. \section{降水量との関係について} 活発な対流活動と降水量とは相関があり, 雲頂温度のデータにしきい値を設けることで 降水のない雲を切り捨てることで考えることができる. Arkin \& Xie (1994), Teguh (2007) では二つの量の相関について さらに相関を良くするために閾値やデータの分解能など 様々な条件を調べて示している. %% この研究のように閾値を設けないデータについては 地表面・海面からの温度データの影響から 降水量との相関が悪くなり, 降水量との関係を考えるのは 難しいかもしれない. しかし, Mori et al. (2004) の1998 $\sim$ 2000 年のTRMM の降水データによる 降水量の分布 (図 \ref{nitta-mori} 右下)に対しては, 年平均しての陸上と沿岸海洋上の 降水量が多い地域と分布が似ており, 年平均した午後(12$\sim$23LT)の降水と午前(00$\sim$11LT)の降水量の差の 分布のうち, 陸上の午後の降水が多い領域と沿岸海洋上の午前の降水が多い領域を 合わせた領域が 1 日周期成分の振幅が大きい領域と一致する. スマトラ島の南沿岸地域において, 陸上の降水ピークは 17 $\sim$ 20 LT, 沿岸海洋上の降水ピークは 01 $\sim$ 02 LT に存在し, どちらも LT で夕方から深夜にかけての降水であることから, 位相の赤い領域とも一致する. \begin{figure}[tb] \begin{minipage}[t]{7cm} % \includegraphics[width=\textwidth]{./fig/2day.eps}\\ \includegraphics[width=\textwidth]{./fig/1day.eps}\\ \includegraphics[clip,width=7cm]{./fig/1day-phase.eps} \end{minipage} \begin{minipage}[h]{7cm} \includegraphics[width=\textwidth]{./fig/Nitta_1994.eps}\\ \includegraphics[width=\textwidth]{./fig/mori-etal_2004.eps} \end{minipage} %\begin{minipage}[h]{7cm} % \includegraphics[width=\textwidth]{./fig/half-day.eps} %\end{minipage} \caption{\footnotesize{ 1 日周期成分の振幅・位相の結果と Nitta \& Sekine (1994), Mori et al. (2004) の海洋大陸周辺領域の日周期変動についての結果との比較. 左側は解析から得られた 1 日周期の振幅・位相. 右上・右中は Nitta \& Sekine (1994) の 1980$\sim$1989 年の GMS の 3 時間毎雲頂温度データによる 1 月と 7 月の 日周期変動の振幅・位相の分布図. 右下は Mori et al. (2004) から TRMM の1998$\sim$2000 年の降水データによる 午後の降水量と午前の降水量の差の分布図. }} \label{nitta-mori} \end{figure} %% これにより Mori et al. (2004) で示唆されるように, 静止気象衛星による雲活動の変動は日周期に限って言えば 地表面の降水の日周期変動の指標として扱うことが可能と言える. 対流が活発な領域かつ振幅が大きい周期については 閾値を設けた場合と近い結果が得られることを考えると, 各周期の振幅が大きい領域では降水量と相関があると言えそうだ. しかし領域全体で降水量の変動との関係を考える場合, 閾値を設けて改めて解析するほうが先行研究の結果と 比較しやすいかもしれない. その上で, 今後雲頂温度データの経年変動$\sim$日周期までの変動を 降水量の周期変動と関連付けて考えることができるだろう. \section{他の物理量との関係について} % 筆者は学部卒業研究において, Matsuno (1986) の赤道波に関する研究を レビューし, 様々な成分に伴う物理量の時間・空間変化が どのようになるかを再確認した. 赤道域の準地衡流波動について, 赤道付近に限定された波に対し ロスビー波と慣性重力波の2つの波の特徴が混合し, 赤道ケルビン波と呼ばれる赤道域のみに出現する波動が存在すること, また赤道上に点状の熱源が存在する場合に 松野・Gill パターンと呼ばれる風速場・気圧場が出現することを確認した. 本研究では果たせなかったが, このような理論的な構造と 本研究の観測結果とを比較すれば, 雲頂温度(高度)変動に見られる 各周期成分が, 気圧や風速など他の物理量の変動と どのような関係になるかが分かるはずである. 現在、並行して京大の田畑ら (私信) により, ウインドプロファイラデータの数年程度の長期解析が開始されつつあり, それと本研究を比較することにより, 雲頂高度と風速との 両スペクトルの関係に決着がつけられることが期待される. %%% 雲頂は気温・湿度の鉛直分布で決まり, 温度 (温位) と凝結を始める点が雲底, 凝結が出来なくなる点が雲頂となる. 非常に活発な対流活動により発達する積雲の雲頂は 対流圏界面まで到達する. %非常に活発な対流活動による そのような積雲の雲頂温度は対流圏界面の温度と相関があると考えられる. Nastrom \& Gage (1985) では飛行機観測による中緯度対流圏界面の 東西風・南北風・温位の水平波数スペクトルを調べ, 三つの物理量が同様のスペクトル分布をとることが分かっている. 赤道域, かつ雲頂温度のスペクトルに同じように適用できるかは不明だが, 3 章で示している水平波数スペクトルも $-3$ 乗と $-5/3$ 乗の傾きを持ち, 500km 未満の波長で傾きが変化しており, スペクトルの形状は共通の特徴を示している. %また Hashiguchi et al. (1997) では, %レーダー観測による境界層付近の東西風・南北風のデータを用いて %周波数スペクトル解析を行っている. %風速の周波数スペクトルも $-5/3$ 乗, $-1$ 乗の傾きがある. %雲頂温度と温位のスペクトルの相関が高いことを示すことで, このことから雲頂温度の変動は温位, 水平風の収束, 鉛直流の変動に対して 関係付けることができるのではないかと考えられる. %% \begin{figure}[htbp] \centering \includegraphics[width=12cm]{./fig/Nastron-Gage_1985_fig3.eps} \caption{\footnotesize{Nastrom \& Gage (1985)による 中緯度の対流圏界面付近の航空機観測データから得られた 東西風・南北風・温位の水平波数スペクトルの分布.}} \end{figure} %%%%%%%%%%%% \chapter{結論} \markright{第 \arabic{chapter} 章 \ \ %.\arabic{section} 結論} 静止気象衛星 GMS-5, GOES-9, MTSAT-1R の 雲頂温度の長期連続毎時衛星観測データから 全データ期間から 14 年分の半旬平均データセットと 観測データの欠損が少ない期間から 約 3 年分の毎時観測データセットを作り, 海洋大陸及びインド洋, 西太平洋領域における 各緯度経度ごとに 雲活動の広帯域周波数スペクトル解析を行い, 各周期成分の振幅, 位相の地理的分布の比較を行なった. また同データから東西波数スペクトルについても解析を行った. %中本 (2009) では ITCZ の変動の周期性をを調べるために, %衛星観測データによるスペクトル毎の地理的分布を調べた. %ここで中本 (2009) で使用されたデータは, 長期観測と毎時観測という特徴から %2 年周期から日周期までの周期成分を全て調べることが可能である. その結果, 周波数スペクトルについて, 各緯度経度の地点では, 全体的なスペクトルの形状は似ており, 2 年$\sim$ 6ヶ月, 3 日より短い周期帯で$-5/3$ 乗, 3 ヶ月$\sim$ 3 日の周期帯で $-1$ 乗の傾きが見られる. 各周期ごとに比較すると, 振幅の大きさやピークが異なっている. 各周期成分の振幅・位相の地理的分布の特徴として, \begin{itemize} \item 1 年周期と 1 日周期は陸上で卓越し, 他周期成分に比べて大きい \item 半年周期は北オーストラリア沿岸とマレーシアで特に振幅が大きい \item 2年周期は ITCZ 領域 (10N $\sim$ 10S) , 特に インドネシア西部沿岸のインド洋・赤道中央太平洋上で振幅が大きい \item 3ヶ月$\sim$ 7日周期は海洋大陸周辺海上, SPCZ 領域, ITCZ 領域 % フィリピン東西海洋上,インド洋上 付近で顕著であり, 海洋大陸上では振幅が小さい \item 4日$\sim$ 1.5日周期は ITCZ 領域, SPCZ 領域で振幅が大きい \item 短周期で振幅の分布が陸に強く依存するのは 1 日・半日周期のみ \item 2 年周期の位相はインド洋・太平洋の振幅が大きい領域で同位相 \item 1 年周期の位相は北半球と南半球の振幅が大きい領域が逆位相 % \item 赤道太平洋上の2年周期が強い領域には短周期成分が小さい \item 1日周期の位相は陸上と沿岸で顕著, 陸と沿岸海洋上で逆位相 \end{itemize} 以上のような特徴が見られる. 東西波数スペクトルについては, 全体的なスペクトルの形状は緯度に寄らず似ており, 長波長帯で $-3$ 乗, 短波長帯で $-5/3$ 乗の傾きが見られる. %%%%% 現時点ではまだ本研究の衛星雲頂観測と同じくらい高分解能と長期連続と 水平連続性の全てを満たす風速観測データは存在しない. しかし, 数年前から海洋大陸域で開始され, 続けられている ウィンドプロファイラ観測のデータが今後さらに蓄積されれば, 時間的(・鉛直的)高分解能と長期連続とは実現できるので, 本研究と同様な解析を行って比較でき, 連続スペクトルの問題も解明できると期待される. 今後の課題として, データの妥当性について, 本研究の閾値を設けない雲頂温度データの周期変動の解析結果は 村上・竹田 (1992) の閾値あり, なしのデータの周波数スペクトル の比較から, 振幅の大きい領域では閾値を設けた雲頂温度データの周期変動と同様に 活発な対流活動の周波数スペクトルの形状や 周期ごとの地理的分布の特徴について 述べられると考えられる. %%% また異なるデータ期間のスペクトルを比較した結果, データ期間によって各地点における 季節内周期の振幅の大きさが変動しており, データ期間に留意して解析する必要があるだろう. %%% 他の物理量との関係について, 雲頂温度の周期変動と降水量の周期変動について, Arkin \& Xie (1994), Teguh (2007) の雲頂温度データと 降水量と相関があること, Mori et al. (2004) の TRMM の降水データによる日周期変動と 降水量の周期変動についてよく一致していることから, 2 年$\sim$ 1 日周期の周期全体にわたり降水量の変動と関係付けて 考えられると思われる. また活発な対流活動による対流圏界面付近まで発達した 積雲の雲頂温度が温位としても考えられることや, Nastrom \& Gage (1985) の東西風, 南北風, 温位の 東西波数スペクトルと 赤道・低緯度領域の雲頂温度の東西波数スペクトルの スペクトル形状の類似から, 東西風, 南北風とも関係付けて考えられると思われる. このような結果と考察を踏まえて, 今後は 異なる周期の相互作用について, また他の物理量との関係について さらに研究する必要がある. \chapter*{謝辞} \markright{%第 \arabic{chapter} 章 \ \ .\arabic{section} 謝辞} \addcontentsline{toc}{chapter}{謝辞} 本研究を行うにあたり, 多くの方々にご指導, ご協力を頂きました. 指導教官である % BPPT/Indonesia,RIGC/JAMSTEC, 神戸大学大学院理学研究科 山中 大学 教授には 研究の全体にわたり非常に多くのご指導を頂きました. 神戸大学大学院理学研究科 林祥介 教授, 岩山隆寛 准教授, 荻野慎也 准教授, 高橋芳幸 助教授, 西澤 誠也 助教授には 本研究を進める過程で多くの有益なご意見を頂きました. 神戸大学 大気海洋環境科学研究室卒業生の 中本 光紀 氏, 東 邦昭 氏には 研究を始めるにあたり多くの研究資料と助言を頂きました. 神戸大学 地球および惑星大気科学研究室の皆様には 研究生活の中で多くの助言・ご意見・激励を頂きました. ここに深く感謝し, 心よりお礼申し上げます. 静止気象衛星の赤外データは高知大学気象情報頁 (http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) より使用させて頂きました. 数値計算と図の作成には, 地球流体電脳ライブラリ dcl-5.3.3 (http://www.gfd-dennou.org/library/dcl/) を使用させて頂きました. 京都大学生存圏研究所 田畑 悦和 氏には, 未発表の観測・解析結果をお送り頂きました. %%%%%%%%%%%%%%%%% % % %%%%%%%%%%%%%%%% \chapter*{参考文献} \markright{%第 \arabic{chapter} 章 \ \.\arabic{section} 参考文献} \addcontentsline{toc}{chapter}{参考文献} \begin{description} \item Arkin, P. A., Xie, P., 1994: Global Precipitation Climatology Project: First Algorithm Intercomparison Project. \textit{Bull. Amer. Meteor. Soc.}, \textbf{75}, 401--419. \item Bjerknes, J., 1969: Atmospheric Teleconnections From The Equatorial Pacific. \textit{Mon. Wea. Rev.}, \textbf{97}, 163-172. \item Hamada, J., Yamanaka, M. D., Matsumoto, J., Fukao, S., and Sribimawati, T., 2002: Spatial and Temporal Variations of the Rainy Season over Indonesia and their Link to ENSO. \textit{J. Meteor. Soc. Japan}, \textbf{80}, 285-310. \item Hayashi. Y.-Y., Sumi, A., 1986: The 30-40 Day Oscillations Simulated in an ``Aqua Planet'' Model. \textit{J. Meteor. Soc. Japan}, \textbf{64}, 451-467. \item Madden, R. A., Julian, P. R., 1971: Detection of a 40-50 Day Oscillation in the Zonal Wind in the Tropical Pacific. \textit{J. Atmos. Sci.}, \textbf{28}, 702-708. \item Mori, S., Hamada, J., Tauhid, Y. I., Yamanaka, M. 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D., Mori, S., Hamada, J.-I., Hashiguchi, H., Tauhid, Y. I., Sribimawati, T., Suhardi, B., 2005; Diurnal Cycle of Cloud System Migration over Sumatera Island. \textit{J. Meteor. Soc. Japan}, \textbf{83}, 835-850. \item Teguh, H., Mitsuta, Y., Yamanaka, M. D., 2007: Possibility of Estimating Indonesian Rainfall Using GMS-IR Data. \textbf{} 1-34. \item 伊藤久徳, 見延庄士郎, 2010: 気象学と海洋物理学で用いられるデータ解析法 気象研究ノート, \textbf{221}, 253pp. \item 川村隆一, 竹田厚, 1992: 海洋大陸における熱帯対流活動の短周期変動. 防災科学技術研究所研究報告, \textbf{49}, 31-52. \item 中本光紀, 2009: 海洋大陸および赤道西太平洋の雲活動に関する観測的研究. 神戸大学理学研究科修士論文. \item 日野幹雄, 2010: スペクトル解析 新装版. 朝倉書店, 300pp. \item 山中大学, 2002: 東南アジアの気候・気象理解のための力学的基礎. 気象研究ノート \textbf{202}, 1--56.%日本気象学会, \item 高知大学気象情報頁 (http://weather.is.kochi-u.ac.jp/) %\item Gill, A.E., 1980: Some simple solutions for heat-induced tropical circulation. \textit{Quart. J. R. Met. 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